ワンポイント・ぜみなーる
ダムの役割
ダムにはどのような役割があるのでしょうか。
ダムの各部の名称や役割などを全4回に分けてわかりやすく紹介します。
(財)ダム水源地環境整備センター
ダム広報センター
第1回:ダムの目的、ダム各部の名称編(5月号) |
第2回:治水編(6月号) |
第3回:利水編(7月号/今回) |
第4回:環境・ダム管理所の役割編(予定) |
illustrated by Kazuo Kawasaki
第3回 利水編
第2回では、ダムの使用目的のうちの「治水」について紹介しました。第3回は、もう1つの使用目的である「利水」について紹介します。
【「利水とは」】
ダムの使用目的の「利水」とは、水道水や工業用水、かんがい用水として使用するため上流ダムにおいて貯留・放流により下流河川の流量を安定させるものです。
具体的には、河川の流量が豊かな時にはダムに水を貯留し、下流で必要な流量が不足している時には、不足分をダムから放流(これを「補給」という)します。
水力発電も「治水」に対して「利水」と呼ぶことがあります。水力発電は、ダムの高さ(落差)を利用し、ダムに貯留した水とダムに流れ込む水を落下させ、落下のエネルギーで水車を回して発電します。
発電で利用した水は、水道水などの用水にも使われます。
【 水道水などの取水とダム操作の関係 】
通常、水道水や工業用水、かんがい用水は、地下水を汲み上げる他は河川から取水し使用します。河川の流量は常に豊かにあるわけではなく、季節や気象の影響(降雨、降雪)によって変化します。
そこで、川の水が減った時にダムから貯留した水を流して流量を安定させ、取水できるようにしています。
では、ダムでどのように流量が調整されているのか、以下にイラストで説明します。
A 通常時(川の水が多くも少なくもなく、ダムによる流量調整が必要ない時)

図−A(数値は、流量の大きさをイメージしています)
川から水道水等を取水する時に、川の流量が正常流量以上より多くそのまま水道水等が取水できる場合でかつ、ダムの水位が常時満水位(満杯)の場合は、ダムに入った流量をそのまま下流へ流します。
ここでは、ダムにより水道水等で新たに取水する量(新規水利流量)を5と仮定します。
川には、河川の正常な機能を維持するため河口まで常に流しておく必要がある量(「維持流量」という)の他、
川の下流で既に許可されている水道水やかんがい用水等の利用水量(「水利流量」という)があります。これらを合わせて「正常流量」といいます。
B 豊水時(川の水が比較的多く、ダムに貯留できる時)

図−B
雨が降り、ダムへの流入や川の下流で水が多くなると、ダムは、下流で必要な正常流量以外の分を常時満水位まで貯留します。
C 渇水時(川の水が比較的少なく、ダムからの放流が必要な時)
図−C
川の下流で流量が不足している時には、ダムに貯留してあった水と新たに入った水をダムから放流します。
川はダムからの補給により、水道水等が安定して取水でき、さらに下流には正常流量が流れます。
流況図

上の図は、取水地点の流量の変化経緯をイメージしたものです。
一般的には春先に融雪水、梅雨の時期や秋には降雨(台風や前線の停滞)の影響で、河川の流量が多くなりグラフは上向きになります。一方で、冬や夏には雨が少ないため、河川の流量は少なくなり
グラフは下向きになります。
このように、河川の流量は1年を通じて安定していないため、流量の多い時はダムに貯留(青色のハッチ部)し、流量の少ない時は貯留水を供給(赤色のハッチ部)します。
【 渇水調整 】
河川の流量が少なくなり、通常通りの水道水等の取水が困難になった時(渇水)、河川管理者と利水者相互で使用量の制限(節水)や取水量の調整(取水制限)を行い、
ダム貯留水を大事に使い被害を軽減します。
このことを渇水調整といいます。
渇水調整に備えて河川毎に渇水調整協議会を設けることになっており、ダムの貯水量が平常時より下回った時や河川の水量が減った時などに開催されます。
今年は四国、九州地方の多くの河川で開催されています。
ダムの役割「利水」についてご理解いただけたでしょうか?
もっと知りたい役割、名称、機能等について、
ダム水源地ネットメールフォームよりご質問下さい。
可能な範囲で当コーナー「ワンポイント・ぜみなーる」上に回答を掲載します。
次回の【ダムの役割】は「環境・ダム管理所の役割編」です。
【参考】
・ダム便覧2008/(財)日本ダム協会ホームページ 【イラスト】
川崎一雄(最初のイラスト)
・河川総合開発用語集/(財)ダム技術センター