ワンポイント・ぜみなーる

ダムの役割

(財)ダム水源地環境整備センター
ダム広報センター

第1回:ダムの目的、ダム各部の名称編(5月号)
第2回:治水編(6月号)
第3回:利水編(7月号)
第4回:ダム管理所の役割編(9月号)
補足編:ダムの型式(10月号/今回)

ダムの型式

これまでにダムの役割として、「治水」として洪水調節、「利水」においては水道、工業用水等の供給、また発電などの目的があることを紹介しました。
今回は補足として、いろいろあるダムの型式について紹介します。これからダムを見る時の参考になれば幸いです。

【コンクリートダムとフィルダム】

ダムの型式は、ダムを造る材料により大きく2つに分かれ、コンクリートで固めたものがコンクリートダム、土や岩石を盛ったものがフィルダムと呼ばれています。
コンクリートダムは、力学的な安定計算の考え方により、重力式やアーチ式などいろいろなタイプに分かれます。
フィルダムは、盛る材料によりアースフィルダムとロックフィルダムに分かれ、さらに水を止める(遮水)方法で均一型、ゾーン型、表面遮水型の3タイプに区分されます。




【 コンクリートダムとフィルダムの分類 】



【型式の選定】

ダムを造る時にどの型式にするかは、建設する場所の地質が良ければコンクリートダム、コンクリートダムが無理であればフィルダムという目安をつけ、 コンクリートの骨材やフィルダムの盛土材が近くで採取可能か、ダム建設地の谷幅などの地形条件による経済性などから型式を決めます。
ダムは水を貯めることが目的ですから、水を止めるためにいろいろ工夫がされています。
コンクリートダムは水を透しません。フィルダムの場合は、土で造るアースフィルダムは水を透しませんが、ロックフィルダムは岩などを盛るため、そのままでは水が透ってしまうため に、中心に粘土を入れたり(コア)、ダム表面をアスファルトで覆うなどして水を止めます。
以下にそれぞれの型式について簡単に紹介します。

コンクリートダム

【重力式コンクリートダム】

重力式コンクリートダムは、貯めた水の圧力(「水圧」、高さに比例します)をダムの重さで受け止めるため、コンクリートの十分な重さとその重さを支え、滑らないような強固な基礎岩盤が必要です。
コンクリートダムの中では最も一般的な型式で、地形・地質等の制約がほかのコンクリートダムより比較的少なく、国内のダムではアースフィルダムに次いで数の多いダムです。


【 重力式コンクリートダムの断面 】



 

奥只見ダム(堤高157m)/ダム湖百選HPより

 

宮ヶ瀬ダム(堤高156m)/ダム湖百選HPより

 

【中空重力式ダム】

ダムの内部に空洞を設けた型式で、重力式コンクリートダムより底幅は大きくなりますがコンクリート量は少なくなります。しかし、空洞にするための型枠使用など施工が煩雑になるため、 最近は採用が少なく、国内で十数例しかありません。

   

金山ダム(堤高57.3m)

 

横山ダム(堤高80.8m)

 

横山ダムの内部

 

【バットレスダム】

水圧を受けるコンクリートの壁をバットレス(扶壁:ふへき)と呼ばれる支壁で下流から支える型式のダムです。
重力式コンクリートダムや中空重力式ダムよりコンクリート量は少なくなりますが、構造が複雑で施工が難しいことから、国内では大正時代から昭和初期頃に造られた数ダムで、最近では採用されていません。

笹流ダム(堤高25.3m)/ダム湖百選HPより

 

【アーチ式コンクリートダム】

アーチ式コンクリートダムは、ダムを真上から見た場合に弧(アーチ)を描いた形をしています。水圧をアーチ形状のコンクリート壁より両岸へ伝え、両岸の強固な岩盤で支えます。
重力式コンクリートダムと比べてコンクリート量は少ないのですが、形状が曲線のため施工は煩雑となります。


【 上から見たアーチ式コンクリートダム 】



 

黒部ダム(堤高186m)/ダム湖百選HPより

 

温井ダム(堤高156m)/ダム湖百選HPより

 

【重力式アーチダム】

重力式コンクリートダムとアーチ式コンクリートダム両方の特性を備えたダムです。アーチ式コンクリートダム型式にするには両岸の岩盤強度が弱い場合に、ダムの重さと両岸岩盤により水圧を支えます。 そのため、コンクリート量は、アーチ式コンクリートダムよりも多くなります。

二瀬ダム(堤高95m)/ダム水源地ネット2009.4月号より

 

フィルダム

【フィルダムの特徴】

フィルダムのうち、土で盛り立てられたダムをアースフィルダム、岩や礫で造られたダムをロックフィルダムをといいます。国内においてアースフィルダムは古くから造られており、 高さの低いかんがい用のため池等に利用されてきました。
フィルダムは、土や岩石などが崩れないように緩やかな勾配で盛り立てて造るため、底幅が広くなりますが、ダムの重量が分散されるため、コンクリートダムのような強固な地盤を必要としません。

【 フィルダムの断面 】



【遮水方法による分類】

フィルダムは、水を止める(遮水)工夫が必要で、その止め方によりに下図のような3タイプに分かれます。


■均一型ダム

ダム本体のほとんどを水を透しにくい均一な粘土で盛り、造られた型式のダムで、ダム全体で遮水します。
粘土などで盛り立てるため、高いダムでは盛土が滑りやすくなり、あまり高くできません。 また、粘土自体にも若干の水が含まれるために、粘土を盛り立てる時に水を抜くドレーン(水抜き)を設けてダムの安定を保ちます。

■ゾーン型ダム

フィルダムを高く盛る場合、ダムの安定を保つために外側を岩や礫など粒径の大きい材料を使用します。そのため外側は水が透りやすくなり、内側を粘土などの粒径が小さい材料で遮水する必要があります。
水の流れを徐々に小さくするため、ダムの外側から内側へ向かって材料の粒径を徐々に小さくするいくつかの層となり、この型式をゾーン型ダムといいます。
中央の遮水ゾーンは水を透さないように粘土で盛り立てます。
遮水ゾーンの両側にある半透水ゾーンは、外側の岩や礫などの透水ゾーンから浸透した水により、中央の粘土が流出しないように保護します。
なお、武利ダム(北海道)では、遮水ゾーンに粘土の代わりとしてアスファルトを使用しています。

■表面遮水型ダム

粘土などの遮水する土質材料がダム建設地の近くで得られない場合などに、ダム本体の上流側(貯水池側)表面を直接アスファルトやコンクリートの壁で覆います。 あまり高いダムには採用されません。

■アースフィルダム

羽鳥ダム(堤高37.1m)/ダム湖百選HPより

 
■ロックフィルダム
 

高瀬ダム(堤高176m)/ダム湖百選HPより

 

徳山ダム(堤高161m)

 

【複合ダム】

一つのダムがコンクリートダム部とフィルダム部とで構成されている型式のダムです。
ダムの基礎地盤が強固な部分と弱い部分に分かれて、全てがコンクリートダムに適さない場合などに採用されます。
通常、基礎地盤の強固な部分にコンクリートダムが造られ、貯水池の水を放流する(越流部)箇所となります。

御所ダム(堤高52.5m)

 

【台形CSGダム】

ダム建設地の近くで利用できる河床砂礫や掘削ズリなどの大きな岩石にセメント、水を添加し混合したCSGと呼ばれる材料を使い、台形状に造られるダムのことを台形CSGダムといいます。
一般的な重力式コンクリートダムは断面が直角三角形ですが、台形状にすることで底面積が広くなり、ダムの安定や、ダムの重量が分散され、基礎地盤に負担がかかりません。
ダムの体積は大きくなりますが、CSGを使うことにより、材料の有効活用や設備の簡略化、施工日数の短縮など、コスト縮減や環境負荷が少ないメリットがあります。
国内において、貯砂ダムなどで実例があります。


 

ダムの役割 補足版「ダムの型式」についてご理解いただけたでしょうか?
一般の方にも理解していただくため、なるべく平易な表現で紹介しています。詳しくは下記の参考文献等をご覧ください。
ダムの役割、名称、機能等について、もっと知りたい方は ダム水源地ネットメールフォームよりご質問下さい。
今後可能な範囲で当コーナー「ワンポイント・ぜみなーる」上に掲載します。


【参考】

・ダム便覧2008/(財)日本ダム協会ホームページ
・河川総合開発用語集/(財)ダム技術センター
・建設省河川砂防技術基準(案)同解説・設計編/(社)日本河川協会編