ワンポイント・ぜみなーる

ダムの魚道

「川の堰で魚道を見かけたのですが、ダムのような高い堰でも魚道ってあるのですか?」 という質問が寄せられましたので、ダムの魚道について、当センターの知見の範囲でお答えします。

(財)ダム水源地環境整備センター
ダム広報センター

Q1:ダムにも魚道はあるのですか?

A1:ダムにもいくつか魚道がありますよ。

ダムというと法的には、高さ15m以上を言います。これ以下は一般に、堰と言っています。

このダムは、日本全国で約2890個あると言われていますが、そのうち魚道があるのは30数個です。主なものは以下のようなもので、高さが50m以上になると無いようですね。


魚道 (手前左側)【様似ダム】

表 ダム魚道の設置状況

No. ダム名 所在地 ダム形式 堤高(m) ダム完成年 魚道完成年
1 様似ダム 北海道 44.0 1974 1999
2 二風谷ダム 北海道 32.0 1997 1997
3 美利河ダム 北海道 GF 40.0 1991 2003
4 中岩ダム 栃木県 GA 26.3 1924 1997
5 白丸ダム 東京都 30.3 1963 2000
6 今渡ダム 岐阜県 G 34.3 1939 1995
7 青野ダム 兵庫県 29.0 1987 2001
8 池田ダム 徳島県 24.0 1974 1975
9 目保呂ダム 長崎県 40.0 2000 2000
10 瀬戸石ダム 熊本県 26.5 1958 2002

【ダム形式凡例】
G:重力式コンクリートダム
GF:重力式コンクリートダム・フィルダム複合
GA:重力式アーチダム

 

魚道(階段式アイスハーバー型)
【瀬戸石ダム】

 

Q2:ダムの魚道にはどのような特徴があるのですか?

A2:ダムの魚道の特徴は、長くなることです。

魚道は、川の水が堰やダムでせき止められ、魚が通れない場合に造る「魚の通る水路」です。

ダムや堰を造ると、上流側と下流側の水位に差(落差)ができます。魚道は、この落差を魚がのぼれるように、流れが緩やかな水路にすることです。流れを緩くするには、 魚道の勾配(水路の傾き)を緩くすることになりますが、緩くすると落差が大きいダムなどは、魚道がどんどん長くなります。


階段式魚道のイメージ


魚道の長さを余り長くしないで魚がのぼりやすくするため、水路の中に階段やプールなどを造り、流れを弱める工夫がされている魚道タイプがいくつかあります。

日本で多いのは、プール付きの階段式魚道です。
一般に階段式魚道の勾配は、1/10〜1/20程度です。ダムによる水位差が30mありますと、勾配1/10の魚道でも300mの長さが必要です。


階段式全面越流型魚道【様似ダム】

 

階段式アイスハーバー型魚道【中岩ダム】

 

地形状ゆるされる場合、いろいろな魚がのぼりやすいようにゆるい勾配の水路式魚道を設置しているダムもあります。


水路式魚道【青野ダム】


Q3:ダムの魚道は、どのようなところが難しいですか。

A3:ダムの魚道の難しいところは、①長くなること、②上流側の貯水位が変動することです。

①長さ対策

魚道が長くなると、魚道入口(登り口、下流端)がダムよりどんどん下流に行ってしまい、ダムと魚道入口が離れてしまいます。魚道入り口が分からずに魚道に入らなかった魚は、ダム直下まで 川をのぼり、行き場が無くなります(いわゆる「迷入」です)。

従って、長い魚道は何度か折り曲げて魚道入口をダム直下にすることが重要です。


 

 

折り曲げた魚道(右写真:○印の箇所)【池田ダム】


②水位変動対策

ダムの貯水位は、貯水した水の使用に応じて上下に変動します。魚道出口(降り口、上流端)は、のぼった魚が貯水池に降りるため、常にダムの貯水位と同じ位置にある必要がありますが、 貯水位が変動するのでその動きに合わせる必要があります。

水位変動が大きい場合は、出口を上・中・下段といくつか造るとか、出口を水位に合わせ動かす調節ゲートや魚道全体が動く可動式等の方法があります。 海外では、エレベータに魚をのせて貯水池に揚げるエレベータ式や、船の閘門と同じ仕組みで魚を揚げる閘門式などがありますが、日本では見られませんね。


可動式魚道のイラスト(左)と写真【二風谷ダム】


その他:降下魚対策

このほかに、降海型の回遊魚が多く通過するダムでは、魚の降下も考慮する必要があります。ダムから魚を降下させるのは難しく、魚道を降下させる以外、これまで降下専用の施設は見あたりません。

しかし、サクラマスの生息する美利河ダム(北海道・後志利別川)では、貯水池上流端の川からダムを避けて、ダムの下流の川まで魚道(バイパス魚道、約2.4km)を造り、魚がのぼり・降りできるようにした例があります。

このように、ダムの魚道は、長大であり大規模な事業となることから、造る場合はそのダム周辺の魚類の生息状況を良く把握し、ダム建設による魚類生息環境への影響の程度を評価し、 魚道が必要かどうか十分検討することが重要です。




ワンポイント・ぜみなーる「ダムの魚道」はいかがだったでしょうか。

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