水の里の旅コンテスト2018【学生部門】最優秀賞/特別賞(絶景賞)

扇ノ山( おうぎのせん ) を源とする殿( との)ダムと浦富(うらどめ)海岸、「旬」体感ツアー
 ~人と水とが創造する、遊・食・景 その見聞はきっと永遠(とわ)になる!~』の企画考案

2019.03掲載
比治山大学現代文化学部 マスコミュニケーション学科観光振興ゼミ2年
首藤洸成 島田浩樹 平川零士 山本真嗣

【はじめに】

「水の里の旅コンテスト」(国土交通省主催)は、「水の里(ダム周辺など、概ね河川の上流部の区域に位置する“まち”や“むら”)の観光資源を活用した旅の企画を募集し、優れたものを表彰することで、水の里の大切さと魅力を伝え、地域の活性化を推進すること」(国交省Press Releaseより引用)を目的に毎年開催されています。
私達は今回、鳥取県鳥取市 国府町 ( こくふちょう ) に位置する殿ダムと、同県岩美郡岩美町の浦富海岸を巡るコースを企画し応募しました。このコースを企画した理由はどちらも扇ノ山(鳥取を代表する火山)を水源とした国府町 袋川 ふくろがわ 流域(上流域)、岩美町 蒲生川 ( がもうがわ ) 流域(下流域)という位置関係にあることから、この2つのエリアを巡ることで、「水」がもたらす脅威と恵みを体感し、「人」が「水」とどのように共生しているかを考える機会を提供できると考えたからです。また官民一体となった地域の方々の熱意と、ツアー対象者となる20代若者層が持つ情報発信力との相乗効果にも可能性を感じています。

【企画ツアーの概要】

①概要 場所:鳥取市国府町・岩美町
  日程:一泊二日
実施時期:夏
代金:約3万円/大人1名
ターゲット:自然と触れ合いたい20代若者層

②行程

  • 1日目≪広島駅新幹線口→鳥取市国府町雨滝(あめだき)散策→とうふ工房雨滝で昼食→殿ダム管理支所(解説等)→殿ダム内部探検(ガイド付き)→袋川発電所内部探検(ガイド付き)→神護(かんご)ふるさと村(かやぶき交流館)でのバーベキュー・ダムカレーづくり・地域団体との交流→大茅(おおかや)ホタルの里まつりに合流しホタル観察・星空観察→かやぶき交流館(泊)≫
  • 2日目≪かやぶき交流館での朝食(地元パン工房)→岩美町渚交流館(マリンアクティビティ体験)→「海と大地の自然館」見学(ガイド付き)→くいもんや海慶(かいけい)さざなみでの昼食→浦富海岸遊歩道巡り→ 浦富海岸島めぐり遊覧船(ガイド付き)→アルマーレでのデザート→広島駅新幹線口≫

【企画ポイント】

企画ポイントは次の3点です。

①「殿ダム」そのものを観光資源としたこと
水の脅威と恵みを体感するツアーを企画するならば、流域に広がる今の安心・安全な、のどかな生活の背景には、人がその知識と優れた技術力で、水の脅威に立ち向かった経緯を、どうしても含める必要があると考えました。殿ダムはそれを学ぶには大変優れたダムです。

②水をテーマとしたストーリー性のある「インフラ・ツーリズム」であること
当企画は「水をテーマとしたインフラ・ジオツーリズム」として提案するものですが、単に観光スポットを繋ぐのではなく、その関連性やストーリー性を重視しました。

③地域における「水」と共生する「人」を観光資源としたこと
旅の楽しさや満足度はそこで出会う人々との触れ合いに大きく左右されるため、当企画には地元の解説・ガイド・交流の機会を多く取り入れるよう工夫しました。

以上3つの企画ポイントを踏まえて、「今だけ、君だけ、ここだけ」の聞いて・触れて・見て・感じることができる旬・体感メニューを揃えました。

【水源地周辺の観光ポイント】

Ⅰ.1日目
① 雨滝・とうふ工房雨滝

平成2年に「日本の滝100選」に選ばれた「雨滝」。幅4m、高さ40mで、鳥取県随一と言われる水しぶきの光景が見られます。雨滝は殿ダムが位置する袋川の源流に位置し、山陰海岸ジオパーク扇ノ山エリアの重要な観光資源の1つです。
昼食は、雨滝から徒歩約10分の「とうふ工房雨滝」で、1番人気メニュー「できたて豆腐膳」1,380円。大豆は100%鳥取県産で、扇ノ山系の綺麗且つ美味しい、まさに恵みの水のみを使用した豆腐づくしの料理。


② 殿ダム管理支所

殿ダムは平成24年に、一級河川千代川(せんだいがわ)水系袋川が流れる鳥取市国府町に完成しました。中国地方では数少ないロックフィルダムです。高さ75m(県下一)、長さ294mの美しさから「平成のピラミッド」とも呼ばれています。管理支所内では殿ダム完成までの半世紀にわたる経緯やその特徴について、詳しい解説を聞くことができます。国府町らしさが表現されたダム湖名「因幡万葉湖(いなばまんようこ)」は公募により決まりました。


③ ダム内部体験

殿ダムには他のダムには見られない最新技術の工法的特徴があります。内部体験ではそうした解説を丁寧に聴くことができます。また角度45度、369段の階段を75m、ダム底まで降りて行く体験はとても刺激的です。内部は暗く、まさに探検をしている気分になれます。底まで降りると、今度はダムの下流面まで、高さ14m、60段の螺旋階段を含め125段を上ります。

④ 神護ふるさと村(ふるさと交流館)

神護ふるさと村のかやぶき交流館は、殿ダム水源地域ふるさとづくり事業として整備された体験施設です。殿ダム建設によって水没地となった2戸の家屋材料を使用して、移築されました。囲炉裏などもあり、古民家ならではの雰囲気が味わえます。ここで夕食として地域関係者の方々とダムカレー作りやバーベキューを通して交流します。

⑤ 大茅ホタルの里まつり・星空観賞

1日目の終わりは地元の祭りである、「大茅ホタルの里まつり」に合流します。殿ダム流域周辺はダム建設によってホタルが増え、地元の保全活動も盛んになったと聞きました。また、鳥取県は環境省によると「星の見えやすさ」全国1位で、現在鳥取県は「星取県になりました」とその魅力を発信しています。殿ダム周辺もお勧めスポットとなっています。ホタルと星空、地元の祭りでの交流と魅力満載です。

Ⅱ.2日目
⑥ 岩美町渚交流館・海と大地の自然館

岩美町渚交流館は、山陰海岸ジオパーク浦富海岸エリアにある自然・文化体験の拠点で、様々なマリンアクティビティ―を体験できます。特にクリアカヤックの体験では、透明なカヌーで最高透明度約25mを誇る浦富海岸の海中を観察することができます。また、渚交流館の隣「海と大地の自然館」は、貴重かつ壮大な山陰海岸の自然環境を学べる資料館です。

⑦ くいもんや海慶さざなみ

JR山陰本線岩美駅近くにある「くいもんや海慶さざなみ」は地元の漁師が経営する人気の海鮮料理店。一番のお勧めは、鳥取県産の山芋入りの、日本海の旬の幸が盛られた「海鮮丼セット」1,500円です。この時期(夏)の旬は「岩ガキ」と「白イカ」。

⑧ 浦富海岸巡りと遊覧船

浦富海岸は岩美町の海岸線15㎞全てを指した名称で、ユネスコ世界ジオパークに認定されている「山陰海岸ジオパーク」の一部です。この辺りのリアス式海岸では、視る角度や時間帯によっても光景が異なり、海岸遊歩道からは多様な海岸地形の絶景を楽しむことができます。
また、浦富海岸島めぐり遊覧船に乗って、日本海の荒々しくも美しい海とリアス式海岸が産んだ特徴的な岩々を間近に見ることができます。船長のガイド付きで楽しめます。

⑨ アルマーレ

浦富海岸沿いJR山陰本線東浜駅が平成29年運行開始の「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」の立ち寄り観光地となったことに合わせてオープンした「アルマーレ」。地元食材にこだわる人気のイタリアンレストランです。ここではデザートとして、こだわりの天然酵母を使用した特製のスフレパンケーキを頂きます。オーシャンビューが特徴的で開放的な窓から見える日本海は圧巻の一言に尽きます。

Ⅲ.最後に

私達は企画を完成させるために現地調査を実施しました。ダム関係者の方々をはじめ、多くの関係団体や料理店などから温かいおもてなしを受けました。こうした出会いがまた旅の付加価値となります。当企画で見たり・聞いたり・体験したことは恐らく私達が感じたように、旅行者のこれからの生活に大きなヒントを与えてくれるでしょう。そんな願いと期待を込めて、サブタイトルを「その見聞はきっと永遠(とわ)になる!」としました。岩美町が舞台になったアニメ「Free!」 のキャッチコピー「その夏はきっと永遠になる」をアレンジしたものです。


■引用等
注1:「殿ダムパンフレット」表紙(国土交通省中国地方整備局鳥取河川国道事務所 殿ダム管理支所)
注2:殿ダム交流館より提供
注3:大茅地区振興協議会より提供
注4:鳥取県パンフレット
注5:岩美町渚交流館より提供
注6:アルマーレより提供