応用生態工学会2020年度Web研究発表会 開催

水源地環境センター
研究第3部 大杉

令和2年(2020年)12月5日(土)に、2020年度応用生態工学会が開催されました。当初は、札幌大会として北海道大学での開催予定でしたが、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響を受け、応用生態工学会でもこれまで経験のないweb形式による研究発表会の開催となりました。

1.応用生態工学会とは

応用生態工学会は、生態学と土木工学が共同して、その境界領域において新たな理論・知識・技術体系を構築し、もって「人と生物の共存」「生物多様性の保全」「健全な生態系の持続」を達成することを共通の目標としています。

1997年10月に発足し、20年余りにわたって活動を続けてきています。

特に近年、激甚化している地球温暖化に伴う豪雨災害、国際的には持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定の採択、ESG投資への関心の高まりなどを背景に、国土強靭化や気候変動への適応策、地域の社会・経済のレジリエンスを高め、ECO-DRR(生態系を活用した防災・減災)やグリーンインフラのような新しい施策への取り組みも期待されています。

当学会の最大の特徴である行政、民間会社、大学・研究機関の多くの技術者や研究者の連携のもと、このような課題にも先駆的に取り組んでいる学会です。

現在、第12期会長は、元国土交通省技監の甲村謙友 国土技術研究センター代表理事が務められ、会員数は個人会員1,036名、賛助会員37法人・団体が所属(2017.7.20現在)する規模の学会となっています。

2.Web研究発表会開催の経緯

当初予定されていた第24回北海道大会は、新型コロナウイルス感染拡大のために延期することとなったものの、2020年度の発表機会を失う特に学生の方々などに対する救済措置として学会事務局で開催方法を検討し、応用生態工学会東京支部と情報サービス委員会一同が受け皿となってWeb研究発表会として開催することとなったものです。

web形式では基本的にZOOMウェビナーを使用しましたが、ZOOMにアクセスできない方々への配慮も考慮して、YouTube配信も並行して実施しました。

通常は、「口頭発表」に加えて「ポスター発表」も実施しますが、今回は時間的な制約もあり、口頭発表のみでの開催となりました。しかし、ポスター発表機会を失う方々への救済措置の位置付けということもあり、「発表賞」は研究発表会表彰委員会と相談して、口頭発表で設けることができました。

3.Web研究発表会の概要

日程やプログラムは以下のように開催されました。

・日 時:令和2年12月5日(土) 9:00~17:30 【ウェビナー開催】
・会 場:オンライン特設会場(ZOOMウェビナー2会場,YouTubeのLive配信併用)
・プログラム:
8:45~8:55 開会あいさつ(甲村会長)
【第1会場】 9:00~17:30
  <セッションA> 河川環境 8件
  <セッションB> 河川地形 4件
  <セッションC> 植生 5件
  <セッションD> ハビタット 5件
  <セッションE> 環境DNA 5件
【第2会場】 9:00~17:15
  <セッションF> 産卵場 3件
  <セッションG> 魚類 8件
  <セッションH> 底生動物 9件
  <セッションI> その他(海岸・鳥類等) 6件
【夜の部】 18:00~
  <若手の会、フリートーク交流会> 応用生態工学会/若手の会主催

以上のように、多岐にわたる分野から、53件の研究発表がありました。河川関係技術者・研究者が多いという応用生態工学会の特徴を反映して、河川環境・地形に関する発表や魚類・底生動物といった研究対象をテーマとした発表、また近年、急速に発展を遂げつつある環境DNAに関するセッションも設けられました。

当日参加者数は324名(ZOOMアクセス数)で、多数の参加がありました。

発表賞の審査は、当日参加する会員の中の役員、学識者等から選出して審査がなされ、上位10件を「優秀発表賞」に選定し、最も点数が高かった1件を「最優秀発表賞」としました。最優秀発表賞は、以下の研究発表が受賞されました。おめでとうございます。

・「環境DNAによるイワナ在来個体群判定用プライマーの開発」
玉田貴((株)環境総合リサーチ)・芝田直樹(同)・澤樹征司((株)建設技術研究所)・大須賀麻希(同)・堀裕和(同)・堀田大貴(同)

大会の詳細は、以下のサイトにプログラムが掲載されています。大会講演集のダウンロードも可能ですので、ぜひご参照ください。
https://www.ecesj.com/contents/event/conference/web2020/web2020_meet.html

当センターのメンバーも事務局に参加していましたが、Web配信での大会は初めてということもあり、不慣れな発表会ではありましたが、参加者皆さまの協力により、無事終了することができました。特に今回のようなコロナ禍でのWeb発表会は前例もなく、これまでの経験も通用しない運営となりましたが、何とか実行委員のメンバーの工夫で無事開催に漕ぎつけました。まだコロナ禍が続く中、今回のようなWeb配信を活用した学会などのイベント運営が増えて来るものと思います。

なお、YouTube配信もまだしばらく見られるようですので、ご興味のある方はぜひご視聴いただき、熱い議論をご覧ください。

当センター職員(大杉)も発表しております。(第2会場 午前11:45頃~)

発表の様子から議論の熱量を感じていただけると思いますが、本学会は、国土交通省の職員等行政の方々や民間会社、大学・研究機関等の多くの土木建設技術者や研究者の連携により、現場に役立つ環境保全技術の課題にも先駆的に取り組んでいる学会ですので、この機会にぜひご入会ください。
(入会案内:https://www.ecesj.com/contents/guid_admission.html

Web配信事務局の様子1

Web配信事務局の様子2

Web配信事務局の様子3

Web大会発表の様子(当センター職員による発表)