「ダム管理所長に聞く」第26回《日吉ダム》

(聞き手:水源地環境センター 名古屋事務所 可児)

(WEC)
「ダム管理所長に聞く」第26回は、淀川水系桂川に建設された多目的ダムである日吉ダムを管理する水資源機構 日吉ダム管理所の高阪所長にお話しをお聞きしました。

高阪所長、どうぞよろしくお願いします。では、はじめに日吉ダムのご紹介をお願いします。

■淀川水系桂川に建設された唯一の多目的ダム

(高阪所長)
日吉ダムは、淀川水系桂川に建設された「唯一の多目的ダム」で、桂川のほぼ中間、淀川の三川合流地点から55km上流の京都府南丹市日吉町に位置しています。

桂川及び淀川沿川地域の洪水被害の軽減、ダム下流桂川沿川の既得用水や河川環境の維持に必要な水量の確保、京阪神地域への水道用水の供給を目的として、平成10年4月に管理を開始しました。管理開始から24年が経過したところになります。

日吉ダム位置図

■貯水容量は淀川水系のダムで最大、7割を占める治水容量

(高阪所長)
ダムの貯水池である「天若湖」は、総貯水容量6,600万m3、有効貯水容量5,800万m3であり、淀川水系のダムでは最大で、ダム湖百選にも選ばれています。

また、洪水調節容量は4,200万m3と、有効貯水容量の7割以上を占めており、治水への期待が大きいダムと言えるのではないでしょうか。

貯水池容量配分、治水容量が7割以上を占める

ダム湖百選にも選ばれた天若湖

ダムの型式は重力式コンクリートダムで、高さ67.4m、堤頂の長さは438mあります。重厚なつくりから、一部では「軍艦ダム」と言われているようです。

軍艦ダムともいわれる重厚な姿

■下流の河川整備状況を踏まえた洪水調節計画

(WEC)
続きまして、近年各地で豪雨災害が頻発していますが、日吉ダムではどのような状況でしょうか?

(高阪所長)
日吉ダムは、100年に1回の確率で発生する規模の洪水に対応した洪水調節操作を行う計画で建設されています。

しかし、下流の河川改修が途上にあるため、ダムの洪水調節効果が下流で最も発揮されるように、約20年に1回の確率で発生する規模の洪水を対象として、流入量 毎秒1,510m3のうち毎秒1,360m3をダムに貯留し、ダム下流へ毎秒150m3(一定量)を流下させる洪水調節操作を管理開始から行っています。

防災操作に使用する常用洪水吐きの放流能力は、毎秒500m3ありますので、この放流能力の30%しか使っていない(=洪水時のダムからの放流量を極力少なくしている)ことになります。

■日吉ダムによる洪水被害の軽減

(高阪所長)
このような洪水時の操作・運用により、管理開始以降の24年間で49回の洪水調節を実施し、下流の洪水被害の軽減に努めてきたところです。

一方で、平成25年9月の台風18号による出水と平成30年7月豪雨による出水では「異常洪水時防災操作」を経験することになりました。

これら出水の概要やダムの効果等の詳細は、近畿地方整備局HPの「河川の災害情報(出水速報等)」をご覧下さい。

日吉ダムの治水効果(平成25年9月 台風18号洪水):近畿地方整備局資料


下流の亀岡市や京都市嵐山地区では、日吉ダムが「異常洪水時防災操作」に移行する前の洪水調節実施中に浸水被害が発生しています。もし、日吉ダムがなければ、被害は更に拡大していたことが容易に想像できます。

ダムだけでは被害を防ぎきれない洪水が実際に発生しており、河川整備のより一層の進捗が待たれるところです。

日吉ダムにおいては、令和2年5月に締結された「淀川水系治水協定」に基づく「事前放流」の適切な運用により、異常洪水時防災操作の回避、あるいは、異常洪水時防災操作の開始を遅らせることによる地域住民の避難時間確保及びダムからの最大放流量の低減に努めてまいります。

平成30年7月 異常洪水時防災操作状況
(クレストゲートからの放流)

■遊びどころ満載の地域に開かれたダム

(WEC)
日吉ダムにおじゃまする途中、ダム周辺には道の駅やレストランなどで賑わっていましたが、ダムや周辺施設を活用した地域活性化の状況についてご紹介ください。

(高阪所長)
日吉ダムは、平成5年4月に「地域に開かれたダム」に指定され、ダム及び貯水池周辺には様々な施設が整備されています。

ダム下流には日吉町(当時)が整備した「スプリングスひよし」(キャンプ&スパリゾート、道の駅、レストランなど)、貯水池周辺には京都府立「府民の森ひよし」(森林公園、キャンプ場、体験施設など)、貯水池上流には京北町(当時)が整備した「宇津峡公園」(コテージ、キャンプ場など)があり、豊かな自然を求め、多くの来訪者で賑わいを見せています。

ダム下流の「スプリングスひよし」では、ダムを眺めながらキャンプや温泉、食事などが楽しめます。
(図・写真は「スプリングスひよしHP」より)

ダム湖畔の「府民の森ひよし」では、キャンプや宿泊の他、森の散策や体験学習などが楽しめます。
(図・写真は「府民の森ひよしHP」より)

ダム湖の上流にある「宇津峡公園」では、キャンプやコテージ、川に入って川遊びなどが楽しめます。
(図・写真は「宇津峡公園HP」より)

■日本初の堤体内開放施設「インフォギャラリー」

(WEC)
ダムではどのようなことが行われていますか?

(高阪所長)
ダムについては、日本初の堤体内開放施設「インフォギャラリー」やダム下流面に「展望台」を整備し、ダムへ訪れた皆さまに貴重な体験を提供しています。

■「日本建築学会賞」受賞

(高阪所長)
また、日吉ダムと「スプリングスひよし」については、ダム下流広場を介して、優れた景観を創出した業績が評価され、平成11年に「日本建築学会賞」を受賞しています。

多くの皆様にこの素晴らしい景観をご覧頂きたいと思います。

日吉ダムとダム下流広場
(写真は「スプリングスひよしHP」より)

■水資源機構は設立60年!今後の安全で豊かな社会づくりに貢献してまいります!

(WEC)
それでは最後に一言お願いします。

(高阪所長)
日吉ダムを管理する「水資源機構」は、令和4年度(2022年度) に、前身である水資源開発公団が昭和37年(1962年) 5月に設立されてから60年の節目を迎えています。

この間、私ども水資源機構は、我が国の全人口の半分以上の方々の生活に関わる7水系(利根川、荒川、豊川、木曽川、淀川、吉野川、筑後川の水系)で水資源の開発・管理を行い、首都圏、中部圏、近畿圏などの大都市圏を中心とした地域に水を安定的に供給することを通じ、我が国の国民生活の向上と産業経済の発展に寄与してきたところです。

今後も、国民生活・経済にとって特に重要な水に携わる政策実施機関として、「安全で良質な水を安定して安くお届けする」とともに、洪水の氾濫被害から地域を守り、安全で豊かな社会づくりに貢献してまいります。

引き続き、地域の皆様、関係機関の皆様のご理解、ご協力をお願いいたします。

最後に、日吉ダムや水資源機構について、多くの皆様に更に知ってもらいたいと思います。ぜひ日吉ダムへお立ち寄り下さい。

 

説明中の高阪所長


(WEC)
本日はありがとうございました。

■関連リンク

○ 独立行政法人 水資源機構 日吉ダム管理所: https://www.water.go.jp/kansai/hiyoshi/

○ 近畿地方整備局「河川の災害情報(出水速報等)」: https://www.kkr.mlit.go.jp/news/river/disaster/ol9a8v000000huyg.html

○「スプリングスひよし」: https://www.springs-hiyoshi.co.jp/

○ 京都府立「府民の森ひよし」: http://forest-hiyoshi.jp/

○「宇津峡公園」: https://fuw.jp/utsukyoh/