土砂分級技術に関する意見交換会―分級技術の導入提言―

一般財団法人 水源地環境センター
研究第二部 主任研究員 坂口宗功

マリコン9社で組織し、ダムに堆積した土砂(堆砂)の除去に関する調査研究に取り組む「ダム水源地土砂対策技術研究会(以下 土砂研、会長・清水琢三五洋建設社長)」は2025年7月25日、東京都千代田区の都市センターホテルで国土交通省との意見交換会を開催し、土砂研が開発した土砂の分級技術を用いた堆砂対策を巡って意見を交わしました。当センターは土砂研と共同で分級技術の開発を進めており、意見交換会にも参加させていただきました。

1.土砂分級技術 開発の背景

堆砂の進行は治水、利水などのダム機能を阻害し、下流河川に供給する土砂不足の原因になるなど流域全体に影響を及ぼします。堆砂対策が課題となっているダムでは機能維持のため、陸上掘削や浚渫による堆砂除去が行われますが、除去した堆砂の処分が課題となっているダムもあります。

土砂研の分級技術は堆砂から細粒分(粘土・シルト分)を除去することに着目し、要求品質に応じた粒径の土砂を抽出することにより、堆砂の有効活用を促進するために開発されました。細粒分を除去することによりコンクリート骨材などの建設資材への活用や、下流河川の環境改善を目的とした土砂還元(置き土)の濁りや固結化の防止が期待できます。

また、要求品質に応じて機械構成を変更することで、コスト軽減が可能なことも特徴の1つです。

分級システムの構成と土砂の流れ

2.分級技術活用促進のための提言書提出

意見交換会では、ダム堆砂対策に関する提言書が清水会長から林正道水管理・国土保全局長に手渡されました。
提言書では、1.ダム堆積土砂の有効利用に向けた仕組みづくり、2.流域全体での土砂管理戦略の推進、3.ダム開発事業等のプロジェクトでの対応、4.ダムの堆積土砂対策としての分級技術の導入促進、5.ダムの堆積土砂対策に関する効果の可視化と広報強化の5項目が提言されました。

林局長からは「治水、利水、環境保全に貢献し、さまざまな課題の解決につながる。時代の流れにフィットしている。」と評価していただきました。

林水管理・国土保全局長(左端)に
提言書を手渡す清水会長(左から2人目)

意見交換会の様子

3.最後に

土砂研では平成29年から港湾土木で培った技術を応用した土砂分級技術の開発を開始しました。令和元年から現地実験を実施し、目標とする分級精度や有機物の除去効果が確認されており、土砂分級技術の有用性が確認できています。
今後も当センターは土砂分級技術の現場実装に向け、技術ガイドラインの整備やダム毎の適用性の評価などを土砂研と共同で進めていきます。

◆土砂研ホームページに掲載されている意見交換会の記事は下記URLからご確認いただけます。
https://doshaken.com/event/index.html

以 上