横手のかまくらに成瀬ダムの雪を運搬

東北地方整備局 成瀬ダム工事事務所
調査設計課長 小笠原 由次

○横手のかまくら
「かまくら」は、秋田県横手市に伝わる小正月の行事で、かまくら内に祀られた水神様に家内安全・商売繁盛・五穀豊穣を祈る450年の歴史を持つ伝統行事です。明かりが灯ったかまくらの中では餅が焼かれ、「どんぶく(半纏)」を着た子供が甘酒や餅を振る舞う様子は、雪国秋田を代表する冬の風物詩となっています。

○今年は異例の雪不足
例年、1月中旬から高さ3m余りのかまくら約80基の製作が始まりますが、暖冬の今年は、この時期になっても横手市内にほとんど積雪がない異例の状況となり、行事への影響を心配した横手市観光協会では、横手市に対して雪の運搬などの支援を求める嘆願書を提出し、その様子が報道されました。

「かまくら」の様子

○成瀬ダムから雪を運搬
報道を見た成瀬ダムの工事に携わる東成瀬村の建設会社が、地域の行事に貢献しようとボランティアでの雪運搬を申し出ました。本体工事を行う2JVとも協力して、1月20~21日に冬期間は閉鎖されている成瀬ダムの事業用地内の展望台などから、10tダンプで40台分(かまくら約13基分に相当)の雪を約50km離れた横手市内の会場へ運搬しました。雪がほとんどない会場に届けられた純白の雪は、雪不足を心配する行事関係者や市民に大変よろこばれました。

成瀬ダム展望台での積み込み状況

○「かまくら」の実施
横手市観光協会では、上記のほか横手市や関係企業の協力を得て雪を運搬し、50基余りのかまくらをほぼ予定どおりに作成しました。個別にかまくらを設置している企業等においても、多くが雪を運搬確保するなどして対応しました。

雪不足で準備に苦労した今年の「かまくら」ですが、2月5日からまとまった降雪があったことから、2月15~16日の「かまくら」当日は、例年より積雪は少ないものの、雪国らしい風景で迎えることができました。

今年の「かまくら」の様子

○おわりに
横手市は、成瀬ダム下流の雄物川沿いの市であり、水道用水やかんがい用水の供給予定地となっています。成瀬ダム工事事務所では、水源地域と下流受益地域の交流を通じて相互理解を深める取り組みを進めているところですが、今回のような地元企業の取り組みが相互理解の促進に繋がることを期待しています。

<成瀬ダムの概要>
成瀬ダムは、秋田県雄勝郡東成瀬村に建設中の洪水調節、流水の正常な機能の維持、かんがい用水の補給、水道用水の供給、発電を目的とする多目的ダムです。ダム型式は台形CSGで、ダム高114.5mは、同型式のダムでは建設中のダムを含め、現時点で最も高いダムとなります。平成30年9月には本体工事を着工し、令和元年10月にはコンクリートの初打設を行っています。令和2年度からはCSGの打設が本格化する予定です。

成瀬ダムの位置

成瀬ダムの諸元

コンクリート初打設

成瀬ダム容量配分図

成瀬ダム完成イメージ