水源地を旅する 第十五弾「兵庫県・史跡とダムをめぐる」

■はじめに

今回は、「水源地を旅する」としては初めての近畿圏のコースを紹介します!スタート地点は東海道新幹線の新神戸駅(A)【地図】。日本最初の重力式コンクリートダムとして知られる布引五本松ダムや日本の近代化を担った生野銀山などの史跡、兵庫の秘湯・黒川温泉、日本三大ねぎのひとつ、岩津ねぎを扱っている道の駅等、多彩な場所を巡ります。


■糀屋ダムを見学

新神戸駅でレンタカーを借りたら高速道路で45分ほど、滝野社(たきのやしろ)インター(B)に向かいます。滝野社インターからは加古川沿いに田園風景と住宅街が広がる国道を北上して一つ目の目的地・糀屋(こうじや)ダムを目指します。途中、10分程度の寄り道にはなりますが日本へそ公園(C)に行ってみました。東経135度、北緯35度の日本の中心にあるというこの公園(これが名前の由来!)からは、加古川を一望できます。入園無料、駐車場も整備されています。

兵庫県では神戸の港町の絶景が有名ですが、山、田畑、住宅街と川が、それぞれ大きな塊となって目に飛び込んでくるここの景観にも奥深い魅力を感じます。

日本へそ公園を後にして住宅街を30分ほど走ると糀屋ダム(D)です。

右岸側(E)からダム堤体を眺めます。

直下(F)から眺めた余水吐き。意識しなければ素通りしてしまいそうな地味なダムですが、代表的な酒造好適米「山田錦」の最上級の産地であり原産地でもある加古川流域に農業用水を供給するという、日本酒ファンにとってはとても重要な役割を担っています。

見学を終えたら、黒川温泉・黒川ダムに向かいましょう。道中の道の駅「山田錦発祥のまち・多可」(G)ではこの地域の山田錦で作られた全国各地の日本酒を豊富に取り揃えておりますので、時間が許せば立ち寄ってみてください。

また、途中国道429号線は細くカーブの多い山道(H)ですので慣れていない方は特に運転に気を付けてください。

■黒川温泉とダムハヤシ

途中、分岐(I)を右に行くと、黒川ダム(J)【地図】が見えてきます。

ダムのすぐ下流に本日のランチ・ダムハヤシをいただける黒川温泉(K)があります!

中に入ると、天井が高く開放感があります。

食堂では、ぼたん鍋やシカカツ定食などのジビエを使ったメニューもありますが、今回はダムに見立てたハヤシライス・ダムハヤシを注文しました。

ダムカレーはほかのダムでもよく聞きますが、ダムハヤシを提供するのは私の知っている限り全国でもここだけです!ここ生野町では、ハヤシライスは後ほど紹介する生野銀山で昭和30~40年代の労働者の間で食べられていた家庭料理だそうで、今でもご当地グルメとして有名です。黒川温泉でのダムハヤシ誕生までの様子はこちらをご覧ください。黒川ダムやその周りの風景を再現した見た目はもちろん、トマトの酸味をほんのり感じるハヤシライスとマイルドな温泉卵の相性も抜群でした。

(写真提供:黒川温泉)

食後は、美人の湯・黒川温泉で汗を流します。美人の湯といわれるだけあって、入った後はしばらく肌がツルツルでした。

車でダムの天端まで行ってダム見学をします。下流側からもダム横からも視界を遮るものがなく非常に気持ちの良いダムでした。ダムの脇の地山はコンクリートで覆われている場合が多いですが、ここでは緑に覆われているのも印象的です。

見学を終えたらもと来た道を引き返し、先ほどの分岐(I)を右に下って次の目的地・生野銀山へと向かいます。

■生野銀山へ

途中、左手に釣り人には名の知れたダム湖である銀山湖を見ながら道を下っていくと生野ダム(L)が見えてきます。

こちらは姫路市等への水の供給を支える重力式コンクリートダムです。

生野ダムから10分弱、山道を下っていき、分岐(M)を左に行けば生野銀山(N)【地図】です。

今は観光地として一般の見学者を受け入れていますが、1970年代までは実際にこの中で銀の採掘が行われていました!

坑道内の見学コースは全長約1000メートル。年間を通して温度は13度で非常に安定しています。当時の採掘の様子を見ることができます。兵庫県出身の方の中には、小学生の頃に遠足で行ったことがある方もいるかもしれません。

(写真提供:松岡 一紀 様)

こんな安定した環境ですと、お酒の熟成にピッタリですね。ダムマニアの間ではダムの監査廊で熟成したワインや日本酒が有名ですが、生野銀山も負けていなさそうです。この銀山熟成酒はお土産屋さんでも取り扱っていました。

坑道の見学を終えたら、資料館に寄って銀山の歴史を勉強していきます。

■日本三大ねぎ・岩津ねぎ

旅の最後は、道の駅でお土産探しです!

国道312号線を北上すると左側に現れるガラス張りの立派な建物が道の駅「フレッシュあさご」(朝来SA)(O)。一般道からでも駐車場にとめて入ることができます。

この道の駅の名物はなんといっても岩津ねぎ!!岩津ねぎは、下仁田ねぎ、博多万能ねぎと並ぶ日本三大ねぎのひとつ。そして、この道の駅から国道を見下ろした先が岩津地域で、まさに岩津ねぎの本場です。11月下旬から3月下旬の期間限定で発売されています。

それ以外の時期は、岩津ねぎを使った加工食品が販売されています。地元ならではのお土産をたっぷり買って帰りましょう。私は、生の岩津ねぎを持ち帰って天ぷらにしました(支配人おススメの食べ方!とにかく甘いです)。岩津ねぎ焼きせんべいや岩津ねぎラー油などの加工食品はお土産にぴったりです。買い物を終え、生野北第2インター(P)から播但連絡道路経由で道が混んでいなければ1時間半余りで新神戸駅に着きます。

■旅のおわりに

これでドライブ旅はおしまいですが、新神戸駅に来たからには新幹線の駅から徒歩で行ける布引五本松(ぬのびきごほんまつ)ダム(Q)【地図】にも行ってみましょう。

徒歩で40分ほど坂を上っていく必要がありますが、日本最初の重力式コンクリートダムで苔むしたコンクリートに歴史を感じます。生野銀山とともに日本の近代化を支えた史跡としてぜひ見学してみてください。スニーカーで十分に行けますが、坂が急なので自信のない方はロープウェイを利用してみてもいいと思います。

今回は非常に多彩なコースを紹介しました。ゆっくり観光したい方は、フレッシュあさごから30分ほど北上した竹田、和田山のあたりで1泊してみてもいいと思います。天空の城として知られる竹田城跡(R)もおすすめですよ。

兵庫県は、広いです。海から山まで、太平洋から日本海まで、いろんな景色のある兵庫県を味わってみてください。

提供者を記したもの以外の写真・動画・文:ダムライター猪野光太郎(いのっち)

■今回のルート