一般財団法人 水源地環境センター
研究第1部 千葉 亨

当センター(WEC)が参画している戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)についてご紹介します。SIPとは内閣府 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が主導して府省の枠組みや旧来の分野を超えたマネジメントにより、社会的課題などに取り組み、科学技術イノベーションを実現するために創設した国家プロジェクトです。

SIPは現在、第3期(令和5~9年度)の4年目を迎え、選定された14課題の研究開発に様々な企業や大学などがSociety5.0の実現に向けて、基礎研究から社会実装までを見据えて研究開発に取り組んでいます。今回は14課題の中の「スマートインフラマネジメントシステムの構築」において、WECが担当している研究題目への取り組みと進捗についてご報告します。

この課題には5つのサブ課題が設定されており、このうちWECは「サブ課題A:革新的な建設生産プロセスの構築(研究開発責任者 永谷圭司 筑波大学 システム情報系 教授)」における研究開発テーマの一つである「a-2-1:人力で実施困難箇所の施工・計測(ダム堆砂)」に参画し、3次元堆砂測量技術と遠隔・省力施工技術を組み合わせた効率的なダム堆砂対策技術の研究開発を8つの機関とともに進めています。

サブ課題A:⾰新的な建設⽣産プロセスの構築における研究開発テーマ

ダム堆砂対策技術の概要

WECは、海洋工事に強みをもつ東亜建設工業(株)と(株)ドラムエンジニアリングの協力のもと無人水中浚渫技術の開発に取り組んでいます。
水中部での堆砂除去は主としてグラブ浚渫やポンプ浚渫が用いられますが、陸上掘削と比較してコスト高となるため、浚渫の必要性が高い場合に限られます。しかしながら、近年、堆砂の進行に伴い、治水・利水容量の回復や利水取水設備などダム運用上重要な構造物への影響回避のため、水中部での堆砂除去の必要性が高いダムが増加していることに加え、熟練のオペレータや作業員の高齢化も全国的に問題となっています。このような背景のもと、水中部での堆砂除去を低コストで効率的に実施する工法が求められており、その解決策の一つとして水中バックホウの遠隔化に着目し、ダム貯水池への適用に向け「遠隔操縦型浚渫機」の技術開発を進めています。

水中バックホウは、もともと海洋工事においてケーソン基礎捨石の均し作業等のために開発されたものでありますが、ダム貯水池では湖底の低い地盤強度や貯水池の濁り、作業時に発生する濁質による視認性の低下等から堆砂除去の手段として使用された実績はほとんどありません。しかし、グラブ浚渫船では行うことのできない構造物近傍での作業が可能であるなどダム堆砂除去に適用できた場合のメリットは大きく、水中バックホウをダム貯水池の堆砂除去に適用するため、これまで以下の項目を中心に研究開発等を行ってきました。

 ①軟弱地盤上でも移動可能な足回り
 ②掘削・浚渫から輸送を高効率に行う浚渫装置
 ③濁質により視認性が低下した場合でも施工可能な水中視認装置
 ④遠隔操縦者が効率的な作業を実現できる施工管理システム

遠隔操縦型浚渫機 完成イメージ

遠隔操縦型浚渫機は昨年春からベースマシンの分解を始め、建造に着手しました。分解した各部品は防水加工や保護塗装等を施した後、新規製作した足回り(クローラー)や浚渫装置等とともに組み上げていきました。組み上げ完成後は、大型水槽などで機体の制御や追従性などの確認を行い、各装置やシステム全体の動作確認・調整などを行ってきました。

今年4月、建造した遠隔操縦型浚渫機を高滝ダム(千葉県)に持ち込み、実際に堆砂対策が行われている現場環境下で実証実験を行いました。実証実験では機体の操作性や濁水中の視認性、土砂吸引等について一定の成果を確認するとともに、実用化に向けた技術的課題等も見つけることができました。今後は、運用上の課題も含め残された期間内で対応方針等を検討していきたいと考えています。また、現場条件が異なる他ダムで実証実験を行い、抽出した課題等への対応・機体のバージョンアップ等を図り、実用化に向けて機能の最適化を図っていきたいと考えています。

今回の実験の見学会ではSIP関係者やダム管理者など約100名(3日間合計)の方々にご参加いただき、あらためて本機への期待、関心の高さをうかがい知ることができました。

湖底から機体を引き上げてその全貌を初披露

機体全景

浚渫土砂吐出状況(沈砂池)

遠隔操縦状況(操作室)

遠隔操縦型浚渫機とプロジェクト関係者

遠隔操縦型浚渫機 研究開発スケジュール

最後に、お知らせがあります。令和8年7月31日(金)『「スマートインフラマネジメントシステムの構築」シンポジウム2026』を秋葉原コンベンションホール(JR秋葉原駅より徒歩1分)で開催します。詳細は以下の(国研)土木研究所 戦略的イノベーション研究推進事務局のサイトでご確認いただき、参加申込みいただければと思います(参加費無料、事前申込制)。

■スマートインフラマネジメントシステムの構築「お知らせ一覧」
https://www.pwri.go.jp/jpn/research/sip/R8_achieve/260508_other1.html