一般財団法人 水源地環境センター
研究第三部 主任研究員 平岡康介
みなさま、「WEC応用生態研究助成」をご存知でしょうか。
WEC応用生態研究助成は一般財団法人 水源地環境センター(WEC)が主催している研究助成で、ダム貯水池およびその上下流・周辺の生態系・水環境に関する応用生態工学分野の研究促進と社会還元を目的としています。本助成は平成17年度から始まり、今年で22年目となります。対象者は大学、高等専門学校等の学校、独立行政法人等の法人、地方公共団体、公益法人、民間企業、NPO法人及びこれらに付属する機関に所属する研究者で、十分な遂行能力を有する研究者を対象としています。
助成期間は研究内容等により、1ヶ年度または2ヶ年度としており、研究1件につき1ヶ年度100万円以内、2ヶ年度研究は総額150万円以内としています。また、35歳以下の非常勤または有期雇用、無給の研究者、もしくは学生で、研究助成額50万円以内かつ研究期間が1ヶ年度の応募の場合は申請者の将来性を考慮することとしています。
採択の審査にあたっては、外部審査委員による審査委員会を開催しています。審査委員会においては、新規性、ダム管理にとっての重要性、結果の応用性・現場への適用性、研究の実現性、若手研究者の将来性等の観点から、申請された研究課題について評価を行います。
ダムは、水資源の確保や洪水防止などに重要な役割を果たす一方で、生態系にさまざまな影響を与えます。たとえば、河川の流れの変化や土砂の移動の遮断、水温の変化などが、ダム湖周辺や下流域の生態系に影響を及ぼします。こうした環境課題に対応するためには、流域全体の生態系を視野に入れた、より持続可能なダム管理のあり方を探る必要があります。そのためには、多様な視点と専門性をもつ研究者による科学的な知見が不可欠です。将来にわたってこうした研究を発展させていくには、ダムと環境の問題に関心を持ち、取り組む研究者の裾野を広げていくことが重要です。
WEC応用生態研究助成では、大学に限らず、民間企業や行政機関、研究機関など、さまざまな所属の研究者や若手研究者がこの分野に参入できるよう支援を行っています。これにより、多様な背景を持つ人々が協力し、よりよいダム管理と流域生態系の保全・再生に貢献することを目指しています。
本助成は、毎年2月-4月に募集して、5月に採択研究を審査しています。今年度(令和8年度)は40件の応募があり、厳正なる審査の結果、下記の5件を助成研究として採択することになりました。
| 研究テーマ | 氏名 | 所属 | 助成年数 |
|---|---|---|---|
| 亜熱帯島嶼河川におけるダム下流の支川土砂供給が河床形態と魚類相に与える影響 | 北 輝斗 | 九州大学大学院 工学府土木工学専攻 流域システム工学研究室 | 1 |
| ダムは絶滅危惧種オガサワラコツブムシのレフュージアになり得るか? | 富川 光 | 広島大学大学院 人間社会科学研究科 | 1 |
| ダム上流の河川最上流部に生息するホトケドジョウのナガレホトケ化 | 宮城 知広 | 千葉大学大学院 融合理工学府先進理化学 専攻生物学コース | 1 |
| 河口堰放流操作の最適化に向けたアユ仔魚流下タイミングの予測手法の開発 | 永山 滋也 | 公立大学法人長野大学 共創情報科学部 | 2 |
| ダムは河川水の水安定同位体比の規則性に影響を与えているのか? -流域の地下水涵養域推定の適切な評価法の検討- | 藪崎 志穂 | 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所基盤研究部 | 2 |
また、本助成では、助成終了後、研究成果を研究者自ら発表していただき、ダム貯水池に関連した他の研究者と議論する場として「WEC応用生態助成研究発表会」を行っており、令和8年度で20回目の開催となります。 昨年度(令和7年度)に開催された第19回発表会では、令和7年3月に完了となった4件の研究について発表していただきました。


発表会の様子(令和7年8月4日)
令和8年度も発表会を開催する予定です。WEB配信も実施予定ですので、お時間がございましたらご参加ください。
◆開催日等の詳細については近日WECホームページにてご案内予定です。
https://www.wec.or.jp/index.html
◆本助成の要領、スケジュールのほか審査結果やこれまでの研究成果概要書は下記ホームページからご覧いただけます。
https://www.wec.or.jp/support/season/index.html
本助成では、ダム貯水池およびその上下流・周辺地域における生態系や水環境に、より多くの方々が関心を持ち、研究の裾野が広がっていくことを重視しています。多くの皆様のご応募とご参加を心よりお待ちしております。