水源地域ビジョン

事例紹介『尾原ダム』

2017.10掲載
一般財団法人 水源地環境センター

尾原ダム水源地域ビジョンの推進活動状況

 尾原ダムは平成24年3月に斐伊川水系斐伊川に建設され、中国地方整備局 出雲河川事務所で管理されています。  尾原ダム水源地域ビジョンは、平成25年9月に「尾原ダム水源地域ビジョン策定委員会」により策定され、以降多くのプロジェクトを推進しています。


1.尾原ダムの概要   

 尾原ダムが建設された斐伊川は、島根県と鳥取県の県境に位置する船通山(せんつうざん)(標高1,143m)を源に、支川を集めながら山間部を抜け、下流に広がる出雲平野でその流れを東に転じて宍道湖、大橋川、中海、境水道を経て日本海に注ぐ一級河川です。平成18年8月には神戸川を斐伊川水系に編入し、斐伊川水系は流域面積2,540Km2、幹川流路延長は153Kmとなりました。
 尾原ダムは、斐伊川水系の治水事業の一環として上流部に設置された堤体高90m、堤頂長さ440.8m、流域面積289km2、総貯水容量6,080万m3の多目的ダム(重力式コンクリートダム)です。


尾原ダム

2.尾原ダム事業の経緯
年 月 事 業 内 容
昭和62年5月 実施計画調査に着手
平成3年4月 建設事業に着手
平成14年4月 斐伊川水系河川整備基本方針の策定
平成17年5月 尾原ダム「地域に開かれたダム」整備計画策定
平成18年6月 本体工事に着手
平成21年3月 斐伊川水系河川整備基本方針の変更
平成22年9月 斐伊川水系河川整備計画の策定
平成22年11月 試験湛水開始
平成24年4月 管理開始
平成24年9月 尾原ダム水源地域ビジョン策定委員会設立
平成25年9月 尾原ダム水源地域ビジョンの策定
尾原ダム水源地域ビジョン推進委員会設立


3.尾原ダム水源地域ビジョンの策定

 尾原ダム水源地域ビジョンは、平成25年9月に「尾原ダム水源地域ビジョン策定委員会」が『尾原ダム「地域に開かれたダム」整備計画』によって整備された尾原ダム周辺施設を活かしながら、ダムを活かした水源地域の自立的・持続的発展を目指して策定しました。
 ビジョンによって設定された3つの基本方針を具体化するための取り組みを「プロジェクト」として23分類に整理し、具体的なプロジェクトの内容として49件のプロジェクトが体系化されました。
  尾原ダム水源地域ビジョン策定にあたっては、上記策定委員会設立後、委員会を4回開催したほか、地域住民の団体等で構成する「さくらおろちを活性化する会」を5回開催し、基本理念、地域の目標像、基本方針、またそれらを踏まえたプロジェクトの優先順位や役割分担などについて討議されています。



4.尾原ダム水源地域ビジョン推進委員会

 「尾原ダム水源地域ビジョン」の着実な実施のため、地域住民への呼びかけ、関係組織相互の協働・連携を実施しながら、状況や満足度等を確認し、必要に応じてビジョンの修正・追加等を行うため「尾原ダム水源地域ビジョン推進委員会」を設立しています。
 同委員会は平成25年9月に1回目が開催され、平成29年1月の開催が5回目となっています。



5.尾原ダム水源地域ビジョンの主な活動概要

 平成28年度は、第4回水源地域ビジョン推進委員会(H27.12.21)において平成28年度実施プロジェクトとして承認された39件のプロジェクトが実施されました。主な活動を下記に示します。
 なお、これらプロジェクトの計画的な実施などによりダム及び周辺施設への来訪者は年々増えており、平成28年度は約15万人となりました。



(1)遠足の誘致(遠足ウイークの実施)

【プロジェクトの分類4「斐伊川流域圏の連携」】

 毎年9月初旬の一週間を遠足ウイークとして、ダム下流域等にある幼稚園等の遠足をさくらおろち湖(※)周辺に誘致する取り組みです。平成28年度は3幼稚園を誘致しています。
 遠足では尾原ダムの見学、ボートクルージング、馬のブラッシングやふれあい、牛の餌やり体験などを行います。 (※さくらおろち湖は尾原ダムのダム湖の名称です。)

▲尾原ダムの見学 ▲尾原ダムの見学 ▲馬とのふれあい

(2)クレスト放流(尾原ダムの魅力発掘)

【プロジェクトの分類13「ダム本体の活用」】

 ダムの維持管理のため毎年3月に行うクレストゲートの点検放流を利用し、ダム下流の広場でイベントを開催しています。
 会場には地元のグルメやダムカレーなど飲食ブースや特産品販売コーナーが設けられ、平成28年3月に行われたイベントには約1,300名が来場しています。

▲点検放流見学 ▲飲食ブース ▲ご当地キャラとダム式バンザイ

(3)さくらおろち湖トライアスロン大会

【プロジェクトの分類14「サイクリング施設の活用」】

 島根県内唯一のトライアスロン大会であるとともにダム湖を泳ぐ珍しい大会です。
 大会は、スイム1.5km・バイク40km・ラン10kmの五輪基準で行われ、平成28年9月の第1回大会には282人が出場しています。

▲スイム(ダム湖) ▲バイク(ダム湖周辺) ▲ラン(ダム湖周辺)

(4) さくらおろち湖お花見レガッタ

【プロジェクトの分類15「さくらおろち湖の活用」】

 さくらおろち湖はコース長1,000m、5レーンの日本ボート協会B級認定コースを有しており、毎年5月にコースの一部を利用してレガッタを開催しています。平成28年度は57チーム、クルー・応援者・スタッフなど約500名が参加しています。

▲レース(熱戦) ▲湖畔で応援 ▲表彰式

(5)さくらおろち湖祭り

【プロジェクトの分類23「交流イベントの活発化」】

 さくらおろち湖祭り実行委員会の主催により毎年10月に開催しており、平成28年度は約2,300名来場されました。
 メイン会場では地元の高校の吹奏楽部の演奏、太鼓演奏、神楽等のステージのほか地元のグルメを中心とした飲食コーナーが出店され、会場の周辺ではダム見学、レガッタ・カヤックの試乗、乳牛とのふれあい体験などが開催されました。

▲地元高校生のステージ ▲レガッタ体験 ▲尾原ダム操作室の見学


6.尾原ダム水源地域ビジョン活動の今後の進め方

 尾原ダム水源地域ビジョンは、策定から5年目を迎えました。
 ビジョンを推進している自治体、NPOや地域の方々は、さくらおろち湖が地域共通の財産という認識を持ち活動されています。
 引き続きさくらおろち湖の魅力を磨き、活かす取り組みを地域と一体となって進めていくそうです。



今回のダム水源地域ビジョンは国土交通省 中国地方整備局 出雲河川事務所にご協力頂きました。